オレンジの夕暮れ〜空っぽ〜



「お盆も集まるの?」
誰かが話している。
「集まるよ〜。」
そう言って誰かが笑う。

 ガラスの外は夕暮れのオレンジが消えかかって、闇がちになっている。暗いながらも雲と空とがまだはっきりわかる。その様相、色彩はまるでブルーベリーのようだった。

 涼しい時間ではあったが、のどは夏っぽいカラッとした乾きを訴えていた。一人の席で、あたたかいコーヒーを口に運んだ。砂糖もミルクも入れていないそれは、心に確かな安堵感を与えてくれた。

『今日も終わりだな・・・』

虚しくも、清々しい言葉が心に残った。

「クラス会、クラス会。中学の。」
「え?でも小学校の同窓会だってついこの間だったじゃない。」
「いいじゃ〜ん、べつに。」
「だってさ、中学なんて小学校の続きみたいなメンバーばっかりでしょ?」

 窓の外に向いた意識は、闇に消えかかるオレンジを必死に見つめていた。

 夕暮れの色がオレンジだから、果物のオレンジを連想してしまう、などと言えば笑い話だろう。だが、今はそれが、ものすごく崇高な神秘に思える。

『クラス会か・・・』

全く自分に関係のない会話を聞いて、直感的に「会いたくないな」と思った。クラス会なんてあれば、の話だが。

 会ったところで、どうなると言うのだろう。
 どうにもならないのに。
 会ったところで、あの日の綺麗な夕日も、冷たく甘酸っぱいオレンジジュースもよみがえりはしないのに。
 でもこういうことを考えると、たまらなく人恋しくなる。そして口の中でこう言う。

『誰に・・・会いたいんだろう?』

 ふと、コーヒーでなくオレンジジュースを頼めば良かったかな?などと思う。

 「お子様ランチ」的趣向のセットメニューには、必ずと言って良いほど、オレンジジュースがついてきた。

いつごろだったろうか?オレンジジュースがつくことに疑問を持って、やがて嫌うようになっていったのは。





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