小僧



次のお話を考えて
立ち上がったとき、
自分が何だかわからなくなった。
視界が無くなって
感じられるものは考えていたお話のことだけになって
自分がその世界の
住人か、神にでもなったような気持ちに染まったとき、
指先に鼓動を感じ、
頭の中に血を感じ、
そして
宗教を、時間を感じて、
自分の死に際とその後を見て、
立ちくらんだのだとわかった。

希に暗闇の中で
自分を恐怖させる
「生きている」という感覚が
再び、こんな途方もない場所で
襲ってくるのかと思われたが、
どうやらそれからは助かった。

だが
規則正しく
無限のような
いくつも存在するリズムたちに
いつか自分だけ取り残されるという
理解は
いつでも自分を退行させ、
今度もまた、自分の概念を忘れるという
情けない結果は残ってしまった。

黙って浴槽を出ると、
思い出すこともないのに、
自分があった。





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