11月 12, 2012
tronmc

映画:映画けいおん!

とにかく気になったのは、ライブ後、空港に向かうタクシー内の場面。
あずにゃんペr……ではなく、いろいろと気になる部分が詰まっていたから。

アニメ版しか見ていない(手を出す必要性を感じていない)が、けいおんの世界は、とにかく波風が立たない世界(一期は少し葛藤とかピンチもあったけど)。アニメ、漫画ではいくらでもそういうものはあるのだが、けいおんが特徴的なのは、彼女たちの過ごす三年間の時期感覚が曖昧にならないところ。きっちり、その時を生きている感じがする。オンゴーイングだ。

その要因は、学校行事も含め、時節柄なテーマが毎話毎話ポンポンと出てくることや、そのテーマがなにげに図太く横たわっていて、話題に小さいオチをつけて進んでいく四コマのような作りではないこと。

あと、もう一つ。
あるとすると大抵毎話の終わりなのだが、しんみりのギリギリ一歩手前のような描写があるところ。そういう部分が好き。
それまで展開された楽しく賑やかな経験を振り返るような落ち着きは、話が、そして日常が次の段階に向かうことを指し示す。それはひいては日常、つまりは彼女らが高校生でいる時間の有限さを語る。どんな日常も、振り返り、まとめるときが来るというのだ。
なにげない日常の刹那、ふとキャラが均質化され、共感している。単なる感傷的な印象以上のものがあると思う。

映画では、タクシー内で梓への感謝や愛情が共有される。その感謝の前提として表面的には梓の旅行の間の献身があり、それが展開された日々と、その繰り返しの振り返りとなっている。
梓はただ一人そこに加わることができない。それは、卒業旅行にも連れられてきてしまい、いまいちモヤっとしていた上級生との関係に、内緒の曲作りどころでは済まない、目に見える壁ができた瞬間でもある。そんなちょっとした残酷さもセンチ。
また、これは個人的な好みだが、その場面を街明かり…人工物の暖かい照明が彩っているところは好感が持てた。こういうセンチが入った場面には夕暮れがベター(ベタ?)な選択肢だろうけど、人工物にもそういう趣があるというのは良いものだ。

ところで、海外旅行であることはネタにはなるけれど、作中の日が経つほどにそういう趣は少なくなっていく。クライマックスが制服でライブという点も含め、ロンドンでの話は、徐々に普通のけいおんらしくなっていく。新しい発見もなくて、絵は豪華かもしれないけれど、あまりそこが重要とも思えない。
そして、最終的に一大イベント、卒業が待つホームグラウンドである学校での話に続いていく。卒業というのは非日常的なものなので、舞台としては、非日常→日常と推移するのだが、話はそれと逆転する形になる。

けれども、話の非日常…つまり卒業のところについては、あんまり上手い非日常になっている気がしなかった。すでにテレビでやっていることだからそう感じる面もあるのかもしれないが、卒業旅行したから卒業します、という取って付けた感じが否めない。
梓に贈る曲の話が旅行もなにも全てを持って行ったような感じもある。
それにしたって、あくまで前日譚であって、映画で出来上がり・披露のところまでは語らず、そこは既出ですがアニメに譲りますという話でもいい…かもしれないけれど、それではあまりにも一見さんお断りで、ファン向けすぎるか。あの曲自体がお涙頂戴なので、映画にはなおさらうってつけもしれないし…。
とにかく、その曲がテーマで、そのための卒業前後だっていうなら、もっとそこにフォーカスするくらいが気持ちいいんじゃないかと思った。そうじゃなくたって、せっかく卒業旅行したのにその余韻が推して知るべしっていうくらいしかないのはあんまり上手いまとまりという気はしない。
主体を無視しても、俺だったらタクシーのくだり以後は梓視点中心にすると思う。

一つわからないのが、これまたタクシーのくだりだが、唯が、梓に贈る曲はいつも通りでいいと気付いたという話。どうしてそういう結論が出てきたのかがよくわからない。見落としかもしれないが。
元々梓は唯たちの演奏に(なぜか)心を打たれて軽音部に入り、のめり込んでいったのだから、いつも通りというのは最良だと思える…が、これはあくまで外野(視聴者)の理解ではないかと思う。半歩譲って、いつも通りでいいことをとっくに知っていた他のメンバーの意識にそれがあったとしても、ピンポイントにその理由であれば、あそこで出すのはちょっとズルい。
もっと概念的な理解であればこういう文句は的外れだけれど、どちらにせよ一見さんには優しくない作りだ。
閑話休題。唯は当然曲を考える段階では「いつも通り」に気付いておらず、且つ難産の様子を見ても、それはいつも通りではない状態だ。また、梓にいつも通りにスキンシップをしても、今回は妙にスカされる感じがあった。つまりいつも通りではない。
最終日のライブでは、いつも通りの制服でいつも通りの演奏をした。が、アドリブが入っていつも通りを超えてしまった。
そういう中でいつも通りってのが出てくるのはわからなかった。
これがきちんとわかれば、卒業旅行とその後の卒業話もつながるし、旅行も意味があるものとして捉えられる。どっか見逃したんかなぁ。

その前を見てもその後を見ても、とにかくタクシーのくだりが分水嶺だなぁ、と思う次第。
30分アニメより、(アニメらしい)青春を感じさせる動作が多めに詰まっていたとはいえ、それでもやっぱりけいおん以上でも以下でもなく。もっとけいおんを楽しめる!もっとけいおんを好きになる!という…拡張性は感じなかった。
けいおんは繰り返して見たいとは思っていないので、このシリーズを見るのはこれが最後かもしれない。そういう意味では、完走した!という感じがあるのは確か。

なお、梓、梓とばかり書いてしまいこれではペロリストと言われても弁明の余地がないが、今回の(今回も?)注目はムギちゃんだった。とくにオレンジのレギンスにはシビれた。世間知らずキャラの割に、一番攻めてるというか、遊んでいるというか、そういうところに感心。
これはこれで、「説得力ねえ!」と言えそうな事実でもあるけど、そういうのはまぁ、どうでもいいや。

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