10月 31, 2005
tronmc

「機動戦士ZガンダムII 恋人たち」感想と考察

先入観とは恐ろしいものである。
現代社会は氾濫する情報が先入観を産む社会だ。

「機動戦士ZガンダムII 恋人たち」

これは、とても儚い映画だ。

清水から自らの手ですくった水が、どんなに頑張って手と手を寄せ合ってもこぼれ落ちてしまう。

舞い散る桜の花びらが、掴んだと思って手を開けば風に飛ばされてしまう。

そんなとき、あなたは何を信じるのだろう?

(ネタバレあり。注意されたし。)

◆おそらく「フラット」と言える結論

ガンダムだということをはじめとした嗜好や、予備知識を一切除いて、普通の一映画として見た場合。

駄作。

そうとしか表現しようがない。
だけど、「どこが悪いのか?」を考えていると、受け手として反省しないといけない部分もあることに気付く。

◆「原因」と「結果」

まずこの映画が理解しずらい点として、登場人物の言動における「原因」と「結果」がハッキリしていない部分があることが挙げられる。

それが主人公「カミーユ・ビダン」において顕著なのだから、すこぶるタチが悪い。
今回は「フォウ・ムラサメ」と恋愛的な関係になるのだが、

・お前はフォウがどうなったのか知っているのか。
・お前は宇宙に上がってからフォウをどう思ってたのか。
・なんでファとキスするんだ。
(諸外国であるような「挨拶のキス」だったら暴動ものだ)
・サラにフォウを感じてどう思ったんだ。

などなど思うところが。
フォウが早々にご退場なされてしまうのはさておいても、これではフォウはカミーユにとって一体何だったのだろう?と思わざるを得ない。
どうも見ている方がおいてけぼりをくらっているようでとても寂しい。

◆カミーユは「無邪気」

前回の「星を継ぐ者」では推量にしかならなかったが、今回を見て、より確信したと言えるのは、新訳(=映画化)にあたっての見せ方の変化に伴うカミーユの性格の変化だ。

彼は「無邪気」とされていると考える。

さらに付け加えれば、プラス思考の無邪気、純粋さだ。
1stガンダムのアムロや、ひいてはエヴァンゲリオンのシンジのように、自己保全のために思い悩んで周囲を壊していくマイナスのタイプではない。加えて、原作のカミーユのような「キレる少年」じみた激情も発していない。

現状、ものすごく(物語作品においては)新しい「優等生」像ではないだろうか。
不完全性の持つ人間臭さと、キザ役のやるような受け手にとって高圧な視点を与えない感じがありながら、鬱屈しないでそこそこうまく物事を片付けてしまうのだ。

「星を継ぐ者」において、両親を失って大泣きしながらもアーガマの談話室でレコアにべったりしてしまうくだりを見てしまえば、もうカミーユを無邪気以外の何と言おうか、と思ってしまう。

しかし、それゆえに反面「バカ」とか「DQN」に見えてしまい、上の『「原因」と「結果」』の段で箇条書きしたような疑問が出てきてしまうのも事実なのだ。つまりカミーユの奇行は「無邪気」によってある程度つじつまが合う(もちろんそれだけでは済まないが)。

そのつじつまは、「本質的には人間ってこうだよね」という肉に即したポジティブな感想を持たせこそすれ、「人間ってこの程度なんだろうか」という、どちらかというとネガティブな響きを持った問題提示も同時に突きつける。

また、このまま大きな挫折や悩みと言った「『問題』を抱えない主人公」になってしまえば、受け手にはあまり残るもののない作品になってしまいそうである。
カミーユが成長していないワケではない。なぜ投降したサラを彼が管理しているのかファに問われるあたりでは、自立的な責任感が備わってきていることを確認できる。
だがそんな成長くらいでサラやフォウに、未来がある、これからやり直せる、といったニュアンスの言葉をかけてすんなり通ってしまうのは甘くないだろうか?
これは次の3作目「星の鼓動は愛」で何らかのアクションをしてもらわなければ困る点だ。

◆受け手が考えるべき見方

「原因」と「結果」がハッキリしていない、と書いたが、これを頭ごなしにダメとは言えない。
要は、ねちっこい内面描写が無ければ、物語そのものを否定するような動きをしてはいけないということ。
想像して読解することも必要だ、ということだ。

映像作品として見れば、読解するにしても、「あまりにも…」という声を否定できる作りではない。
けれども、他のメディアと比べたら、それはあまりにもイージーな挫折だろう。

たしかに現状映画館でしか見られないのだから、他のメディアのようにじっくりと見て精査することは困難だ。
DVDなど、個人の意志で自由に再生ができるメディアを待つしかない。
それでも、本当に自分なりの理解が得たいなら、そのための努力をすべきなのだ。

でなければ、ゆくゆくは無作法・無節制に公共に感情を垂れ流すことが普通になってしまう。
(昨今のブログブームとやらにそれを感じてしまうのは考えすぎだろうか)

もちろん、劇場版∀でこの手の見せ方に慣れてしまったガンダムファンにも反省は必要だ。

◆作り手に反省して欲しいこと

劇場版ゼータでは「エイジング」と銘打った、旧画と新画を(宣伝文句曰く)違和感なく表現する技術が使われている。
もっとも、現実には「施しました」というある程度の努力は見られても、誰が見ても旧画と新画の違いがまるわかり、というレベル。
総監督であり、原作、脚本どころか絵コンテまできっている富野氏が自らの著書「映像の原則―ビギナーからプロまでのコンテ主義」にて綴った、空間の同一性物語の連続性という概念に自ら反しているような印象さえ受けてしまう(もっとも、エイジングだけでなく脚本などこの本に即してつっこむべきところはまだある)。

「星を継ぐ者」は、それでもまだ映像のレベルで済んでいたので良かった。
だが、今回は物語の展開、場面、場所の移り変わりがより激しい。
カットが変わると、状況もかなり変わっている場面が多い。そこで見る旧画と新画のギャップはけっこうキツいものがあった。

また、つぎはぎがこなれてしまったのか、前回以上に本当に良くコロコロと旧画と新画が入れ替わる。
当然新画は目新しく単純な質は良いので、
「ああ、この場面の新画はいいなぁ。」
などと思った矢先に…ブツリ。気持ちをぶった切って旧画が入る。

これ以上ないほど単純に、「すくった水がこぼれ落ちる」瞬間である。

クオリティ以上としての理由に加え、流れとしての理由も加わった。二つの理由が重なり、織りなす叫びはただ一つ。

もっと新画を見せろ。

とくにMSの戦闘シーン…。

◆まだ烙印は押せない

位置関係と時間がハッキリせず、ストーリー…というよりは情勢の流れが掴みづらい印象も拭えなかった。
つまりはぶつ切り、ダイジェスト的ではないかという印象である。

完結となる次作ではよほど上手くまとめないと…

というか、上手くまとめてもらわなくては困る!
大風呂敷を広げたのだから。

それは物語の展開的なものではない。
この作品の中で展開し完結した一つ一つの行動や要素について、理不尽の大風呂敷が広げられてしまったのだ。

つまりは「納得できる説明を求めたいッ!」というのが正直なところ。
それによっては、正直に「駄作」と書いたが、次作によっては「これでよかったんだな」という、もう少しマトモな評価ができるかもしれない。

7 Comments

  • やっぱり、新旧の画の格差は辛いですね。
    DVDとして、家のテレビで観ればそれほど気にならないのかな…
    まだ、1作目のDVDを観てないのでわかりませんが(^^;

    この分だと『ZZ』も黒歴史になるんでしょうか?

  • [映画]機動戦士Zガンダム??恋人たち?

    早速観て来ました、しかも舞台挨拶付きで♪撮影禁止ということで写真を撮れなかったのが残念だ・・・

  • >新旧の画の格差は辛いですね

    とくに酷かったのは、今回は冒頭でベルトーチカが出てきますが、新画で赤い飛行服だったのが、次に旧画で出てくると青い私服、なんていう場面がありましたよね。
    これ、知らない人は「これは誰?」ってなっちゃいます。こういう使い方をされるくらいなら旧画はやめてほしいですね。

    >この分だと『ZZ』も黒歴史になるんでしょうか?

    無難に繋がるようにはやってくれるんじゃないかなぁ、と( ̄▽ ̄;
    1stガンダムのテレビと劇場版みたいなもんでしょうかねぇ。

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  • 話以前にゆかなの棒読みには触れないのか(笑)
    ゆかな自体はよそでちゃんと仕事できてるのを見たが、
    バトロワで新訳ベースのフォウのスタバとかにいそうなそのへんのねーちゃんぶりに吹いて、
    怖くてとても映画なんか見れねぇw
    お前、誰だよ?ww

    なるほど、仏の心持ってない奴はお断りなのか・・・w
    リメイクで大根出荷とかされたら普通内容以前の話しねぇ?w

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