8月 15, 2012
tronmc

読了:終の住処

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たまにはラノベじゃないものも読んでみる。
2009年に141回芥川賞を受賞した作品。近日文庫化されるらしい。

 

●驚くほど早く読めた

ラノベじゃないし、文章びっしり系なのに、するするっ、と読めてしまったのが自分でもびっくり。
たった一日、しかも正味2時間くらいで読み切ってしまった。

地の文が長かったり、情景描写が多い作品は、細部を把握するために読み返してしまって、なかなか先に進めず時間がかかってしまうことばかり。けれどこれはほとんどそういうことなく読めてしまった。

のっけから、どこかけだるく不穏な雰囲気が漂っていた。
状況に真綿で首を絞められるような、じめっとした展開が続くので、作品世界に止まりたくはなくて、さっさと読んでしまったのかもしれない。
ただ、不思議と読むのを辞める気にはならなかったのは、パッとしない主人公とその状況が、少しのことで好転しそうな世界が広がっていたから。止まりたくはなかったけれど、救いを求めて次のページ、次のページ、と駆け抜けてしまった。

また、章立てもなく、段落すら少ない体裁が、一息つくヒマを与えてくれなかったので、一気に読むしかなかったというところも。

 

●救いのない人生の理由

結局、求めていた救いはなかった。
好転しそうなところ(子供ができるとか、やたらモテるとか、カリスマ建築士と出会うとか、変に閃いたり悟ったりするところとか…)はあるけれどなかなか好転しない。
これは視点(語り口とも)がそうなので仕方がない。
それは、陰鬱で、なおかつ主人公に責任逃れさせるような視点。
これを貫くためには年単位で作品内の時間も、出来事の子細も、どんどんすっ飛ばす(ここが少し爽快だったりもする)。
そういう視点だから、好転しそうなところでも好転しない。良いことがあってもあまり良かったように書かれない。普通に考えれば良かったことくらいありそうな、すっ飛ばされる年月や子細の中でもそれはピックアップされない。

ただ、救いがないものの、酷く事態が落ち込むこともない。というか、落ち込ませて見せない。

 

●寂しいモノですねぇ~、的な

一言でまとめてしまうと、「ぼくは悪くないんだけど、こんなふうに人生ってちょっと寂しいもんなんだよね」というセンチメンタルがキモの作品であると感じた。
上述のように視点はものすごく恣意的なのだが、一方で物語性がなく、物事の流れどころか、主人公の思考すら偶発的(論理性を持たない)にする描き方がリアル感を演出している。

終盤、少し主人公がかっこよく描かれるという山場はあるも、最後まで何かハッキリとテーマや教訓めいたものを示すわけでもなく、モヤモヤと終わっていくのは文学くさい。そういうのはラノベじゃ味わえないので、それを久しぶりに味わったことが、今の自分には最大の収穫か。

鬱々しい方向に傾きそうな、あと少しでいかないような、モヤッとした読後感があるので、とりあえず明るい話でも摂取したいところだ。

 

余談:俺にとっては花咲くいろはの方がよっぽどセンチです。

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